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赤い川蝦
山々が黒味を帯びた緑に変わって、山間はすっかり夏の気配になってきた。暑くなってくると、子どもらの遊び場は、川縁へ移っていく。
あやを入れた、すうちゃん、しげやんの三人の幼い子たちには、すばしこい鮠(はや)には手が出ない。川縁のごく浅い所の葦の繁みのあたりへ、見よう見真似の仕草で、じょれん(竹で編んだ小型の箕(み))をつけて、片足でじゃぶ、じゃぶと水を踏む。あげたじょれんの底には、小さい川蝦が四、五匹、ぴんぴんと跳ねている。あやたちは、そんな獲物にはしゃいで、岸辺においてある小さいバケツへ放す。何度も繰り返しているうちに、バケツの中の小蝦は数を増していく。あやは、バケツの縁に顔をくっつけて中をのぞく。半透明な薄飴色の小蝦は、じいっとして浮かんでいるかと思うと、急にぴいんと跳ねて、素早く向きを変え、また、じいっとしている。小さい目が光っている。三人は、かわるがわるにバケツをのぞきこむ。
川蝦の入ったバケツを、三人は順番にぶらさげて、しげやんの家へ行く。しげやんの家には父親がいない。しげやんの母親のかいしゃんは薄暗い壁際で、いつも手機で絣を織っている。三人が下着までべっとりと濡らしていても、かいしゃんはバケツを覗いて、
「ふうん、あんたら、よくもこげに(こんなに)蝦を仰山とったなあ。ほんでも、そげに服を濡らしてしもて、どうならや」
と薄い眉をちょっとしかめて見せるだけで、叱言(こごと)は言わない。そして、機からおりてきて、かまどに土鍋をかけ、すくず(枯れ松葉)をぽっと燃やしつけて、少しのしょう油と砂糖で小蝦を煮てくれる。小蝦は鮮やかな赤蝦になる。
チュンチュク チュンチュク 雀の子お
生まれたとおきは丸裸
お耳も聞こえず 目も見えず、
ああたま振り振り チュンチュクチュン
窓辺で、背を丸めて手機を織りながら、かいしゃんはいつも、雀の子の歌を鼻歌まじりに歌ってくれる。
三人は、かいしゃんの歌に合わせて、何となく体を揺すりながら、小皿に分けてもらった小蝦を食べる。小蝦は噛むと、ぷちぷちと小さく鳴って香ばしい。食べながら、三人は顔を見合わせて、くっくっと笑う。
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